後見人がやる日常の仕事

成年後見人の仕事は、日常的にいろいろあります。

以前書いた記事では、タイトルどおり「後見人になったら最初にやる仕事」を説明しました。
⇒「後見人になったら、まず最初に何をするのか」

今回の記事では、後見人となってから日常的に行う基本的な仕事には、どんな仕事があるのかを記します。
後見人の仕事には、大きく分けて次の仕事があります。

  • 財産管理
  • 身上監護
  • 家庭裁判所への報告

この3つが、後見人が日常的に行う基本的な仕事です。

後見人の日常の仕事

① 財産管理

本人のために光熱水費や施設利用料、入院費などの支払いをしたり、年金などの受領などといった、文字どおり本人の財産を管理します。
収入や支出は「通帳」や「現金出納帳」で漏れの無いように管理します。
具体的に行うことは次のとおりです。

  • 預貯金口座の管理
  • 現金の管理
  • その他、保険、有価証券、貴重品、不動産などの重要な財産の管理
  • 相続手続き

それぞれのポイントを以下にまとめます。

預貯金口座の管理

  • 各金融機関には、成年後見制度の関する届出を行います。
  • 本人の収入や支出が、一時的であっても後見人の口座に入金されることの内容に注意します。
  • こまめに記帳します。(最低でも月1回)
  • 定期的な支払いなどを現金で行っていたような場合には、可能であれば口座振替にした方が管理しやすく効率的です。
  • 通帳には、鉛筆で「どこからの入金か」「何に使った支出か」など、お金の動きを細かくメモしておくと、家庭裁判所への報告などの時に困らないでしょう。

現金の管理

  • 一番注意しなければいけないことは、本人の財産と、後見人の財産を混同しないことです。本人の財産を管理するための後見人専用の財布を用意した方が良いでしょう。
  • 管理といっても、全ての現金を預かってしまうと、本人が日常生活で必要なものさえも自分で購入することができなくなってしまいます。ですから、大きな財産・現金を後見人が管理し、本人には必要な分だけの小さな金額を渡しておいて、足りなくなったら補充するというのが一般的な管理方法です。
  • 現金の管理については、「現金出納帳」をつけましょう。市販の家計簿が便利です。
  • 購入したもののレシート、領収証は捨てることなく、現金出納帳と一緒にノートに貼るなどしておいた方が良いでしょう。

その他の財産の管理

  • 郵便物の管理・・・健康保険や介護保険、各種税金など重要な郵便物を確認し、それぞれの手続きを行います。
  • 身分証明書などの管理・・・運転免許証、各種保険証、年金手帳、障害者手帳、パスポートなど、証明書類を管理します。
  • 不動産の管理・・・不動産の権利証や契約書などを管理し、固定資産税の支払いや賃貸借している場合には家賃管理などを行います。
  • 本人の住居の管理・・・本人が施設に入居し、自宅が空き家となってしまった場合、いつ本人が帰宅しても良いように管理します。
  • 自動車の管理・・・自動車税や車検などの手続きを行います。ただ、本人が今後使用する見込みが無ければ、売却を検討することが必要になることもあります。

相続手続き

  • 遺産分割協議など、本人が相続人である場合、本人に代わって手続きを行います。

財産管理で注意しなければいけないこと

  • 後見人の財産管理は「本人のため」に行われるものです。「後見人のため」に支出されることがあってはいけません。
  • 後見人が、後見人としての仕事をするための交通費は、本人の財産から支出することができます。
  • ご祝儀やお香典は、常識の範囲内であり、本人の財産状況を苦しくするものでない、本人の財産から支出することができます。
  • 送迎や介護のために自動車を購入することは、原則として認められません。
  • 親族などに対する贈与も、原則として認められません。(お年玉として毎年渡していたものであれば、例外的に認められる場合もあります。)
  • 「後見人のための支出」になってはいけません。あくまでも「本人のための支出」でなければいけません。判断に迷うときは、こまめに家庭裁判所に確認するクセをつけた方が良いでしょう。

後見人の財産管理

② 身上監護

本人の意思を尊重しながら、本人の心身の状態や経済状況にも配慮して、生活や療養に関する支援をします。
具体的には、必要となった介護サービスの契約、介護施設への入退所契約、病院での治療や入院手続きなどの支援を行うことです。
その他には、本人の住居を確保したり、生活環境を整備するなどして、本人が適切な環境で生活できるような支援を行います。
具体的に行うことは次のとおりです。

  • 介護・医療・リハビリなどのサービスを利用するための契約の締結
  • 要介護認定の申請
  • 介護施設への入退所に関する契約の締結
  • 住居に関する契約の締結

それぞれのポイントを以下にまとめます。

介護・医療・リハビリなどのサービスを利用するための契約の締結

  • 現在の状況を確認し、本人を担当しているケアマネージャーなどに介護サービスなどの利用について相談します。
  • 必要なサービスがあれば、サービスを利用するための契約を締結します。
  • 医療を受けるための契約を締結するのも後見人の仕事です。
  • しかし、医療行為を受けるか否かについては、原則として本人のみに同意権があり、たとえ後見人であっても同意権はありません。ですから、後見人には手術を行うことについての同意権はありません。
  • ただし、後見人が本人の配偶者であったり、親子であったり、兄弟姉妹である場合には、後見人としてではなく、それぞれの立場で同意権を有していることもあります。
  • なお、健康診断や検査など、軽微な医療行為については後見人にも同意権があります。

要介護認定の申請

  • 介護保険制度を利用して介護サービスを受けるためには、各市町村に申請し「要介護認定(要支援認定)」を受ける必要があります。

介護施設への入退所に関する契約の締結

  • 「要介護認定(要支援認定)」を受けたうえで、必要な介護サービスを受けるための契約を締結することも後見人の仕事です。
  • 介護サービスを利用するまでの流れについては、こちらのリンクをご参照ください。

「介護サービス利用までの申請の流れ」( 独立行政法人福祉医療機構ホームページより)

住居に関する契約の締結

  • 本人が自宅での生活を望む場合には、その不動産の賃貸借契約を行うことも後見人の仕事です。
  • 本人が自宅での生活を続けることが困難な場合には、本人のために適切な住まいを確保する必要があります。
  • その場合でも、本人が介護施設への入居を拒否する場合に、強制的に入居させることは原則としてできません。施設への入所が適切だと思われる場合には、本人を説得することが必要です。後見人は本人の意思をくみ取ることが大切です。

後見人の身上監護

③ 家庭裁判所への報告

家庭裁判所から後見人の仕事について報告を求められることがあります。
この時、家庭裁判所から求められた後見人の仕事内容について報告書を作成し提出することも、後見人の大切な仕事です。
後見人が本人のためにちゃんと仕事をしているかどうかチェックするためです。

報告は概ね1年に1度程度ですが、それ以外にも報告を求められることがあります。
決められた様式の報告書に必要事項を記載して、家庭裁判所に提出します。

報告内容は、本人の生活状況、財産状況、収支状況、今後のことなどです。
1年分の報告を行うことは、大変な作業になります。
日頃から財産状況や収支状況のほか、後見人として行った仕事について日誌にこまめに記録しておくと、報告を求められたときも慌てませんし困りません。

参考までに、下記リンクから報告書をダウンロードすることができます。
⇒「成年後見事務報告書書式」(裁判所ホームページより)

後見人の家庭裁判所への報告

※後見人ができないこと

後見人の仕事は、上記①~③に記したとおり数多くあります。
それらの仕事を行うための権限も与えられています。
しかし、次の行為については後見人の権限外となり、行うことができません。

事実行為の代理

  • 本人の身の回りのお世話
  • 介護、看護

※こうした行為の必要がある場合、介護サービスや医療サービスが受けられるように手配し、契約をおこなうことが後見人の仕事です。
※ただし、後見人が本人の配偶者であったり、親子であったり、兄弟姉妹である場合には、後見人としてではなく、それぞれの立場でこうした行為を行う義務があります。

身分行為の代理

  • 結婚
  • 離婚
  • 認知
  • 養子縁組
  • 遺言書の作成

※こうした行為は、本人の意思がもっとも尊重されるべき行為です。本人に代わって後見人が行うことはできません。

後見人にできないこと



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