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2026.10.30

こんなニュースを目にしました。
「紀州のドン・ファン」と呼ばれた男性が残した、
「いごん 個人の全財産を田辺市にキフする」
という自筆の遺言書。
その有効性が争われていましたが、
最高裁が親族側の上告を棄却し、
遺言書を有効とした1、2審判決が確定したとのことです。
このニュースを見て、
改めて「遺言書を残す」ということについて考えました。
自分で書いて残す遺言書を
「自筆証書遺言」
といいます。
法律上は、原則として、
・全文
・日付
・氏名
を本人が自分で書き、
押印することで作ることができます。
※財産目録については、自書しなくてもよい例外があります。
自分一人で作ることができ、
費用もほとんどかからない。
とても手軽な遺言の方法です。
ただ――
「法律上、有効な遺言書を作ること」と、
「その遺言が後になって争われないこと」は、別の話です。
今回の遺言書も、
最終的には有効と認められました。
しかし、
記事によれば、
遺言者が亡くなったのは2018年。
遺言書の有効性を認める判断が最高裁で確定したのは2026年9月30日です。
亡くなってから、
実に8年以上です。
一審では筆跡鑑定などから本人の自筆と認定され、
二審でもその判断が維持され、
最後は最高裁まで争われました。
なぜ、
こういうことが起こるのか。
遺言には、
少し特殊なところがあります。
遺言が効力を生じるのは、
遺言を残した本人が亡くなった後だからです。
そのとき、
本人に聞いて真意を確認することはできません。
「これは本当にあなたが書いたんですか?」
「本当にこの内容を望んでいたんですか?」
「誰かに言われて書いたものではないんですか?」
そんな疑問が出ても、
一番よく知っている本人は、
もう答えることができません。
今回のニュースでも、
裁判所は筆跡鑑定だけでなく、
生前に田辺市へ1000万円以上を寄付していたことや、
今後も寄付する意向を示していたことなど、
さまざまな事情を踏まえて判断しています。
結果として遺言は有効でした。
でも私は、
ここで、
「自筆証書遺言でも大丈夫なんだ」
だけで終わってほしくないと思います。
むしろ、
このニュースから考えていただきたいのは、
「自分がいなくなった後、自分の意思をどうやって証明するのか」
ということです。
もちろん、
自筆証書遺言が悪いわけではありません。
現在は法務局で遺言書を保管してもらえる「自筆証書遺言書保管制度」もあり、
紛失や改ざんなどを防ぐためには、
とても有用な制度です。
ただ、
それでも、
遺言の内容や作成時の判断能力、
本人の真意などをめぐって争われる可能性がなくなるわけではありません。
特に、
「特定の人に多く財産を残したい」
「相続人ではない人や団体に財産を渡したい」
「相続人同士の関係に不安がある」
「自分の遺言が争われる可能性がある」
そんな事情があるのであれば、
私は、多少の手間や費用がかかっても、
公証人が関与し、
証人2人が立ち会って作成する「公正証書遺言」をお勧めしています。
遺言書の目的は、
「有効な紙を一枚残すこと」
ではありません。
自分がいなくなった後にも、
自分の意思がきちんと伝わり、
そして、
その意思ができる限り確実に実現されること。
そこまで考えて初めて、
「遺言を残す」
ということなのだと思います。