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2026.10.29

【「緊急連絡先」になった人は、費用まで払う義務がある?】

今日は「身寄り問題」に関するお話しです。

病院や施設への入院・入所手続き。

「ご家族の方、こちらにもお名前をお願いします」

渡された書類を見ると、

「身元引受人」

という言葉があります。

「まあ、何かあったときの連絡先でしょう」

そう思って、よく読まずにサイン。

でも実は、

その署名によって、

入院費の支払いまで保証人となる契約をしていた。

そんなことがあります。

病院や施設などでは、

「身元引受人」

という言葉がよく使われます。

ただ、

「身元引受人」という言葉だけで、

法律上の責任が一律に決まっているわけではありません。

ここに注意が必要です。

実際、

病院などが

「身元引受人」

に求めている役割には、

・緊急時の連絡

・入院中に必要な物品の準備

・入院費等に関すること

・退院時の支援

・亡くなった場合の遺体や遺品の引取り、葬儀等

など、さまざまなものがあります。

だから大切なのは、

「何という欄に署名するのか」

ではなく、

「署名することで、どんな義務を負うことになるのか」

なのです。

たとえば、

「本人が入院費を支払わない場合には、連帯して支払う」

という内容に同意して署名すれば、

名称が「身元引受人」であっても、

保証の約束を含むことになります。

有効な連帯保証契約が成立していれば、

「私は緊急連絡先のつもりでした」

というだけで、

当然に支払義務を免れることはできません。

しかも連帯保証人には、

通常の保証人に認められる

「まず本人に請求してください」

「本人に財産があるなら、そちらから取り立ててください」

という権利がありません。

逆に、単に

「緊急時にはこの人へ連絡してください」

という連絡先として名前を書いただけで、

保証契約をしていないのであれば、

家族だから、緊急連絡先だからというだけで、本人の入院費を支払う義務が生じるわけではありません。

ここは、とても大切です。

そして、ここからが「身寄り問題」です。

実務では、

本人に身元引受人となってくれる家族などがいないために、

知人や友人、場合によっては支援者が、

病院や施設から

「ここへ名前を書いてもらえませんか」

と求められる場面があります。

頼まれた側も、

「この人を放っておくわけにはいかない」

という思いから署名してしまう。

そのお気持ちは、とてもよく分かります。

でも、

だからこそ注意してほしいのです。

善意で名前を書いたその一筆が、

思いがけない金銭的な負担につながることがあります。

「この人を放っておくわけにはいかない」

「入院できなくなったら困る」

そんな善意から名前を書くこともあると思います。

でも、だからこそ、

支援することと、

保証人になることは分けて考えてほしいのです。

緊急連絡先になること。

病院や施設から連絡を受けること。

本人の生活を心配して支えること。

そして、

本人の金銭債務を保証すること。

これらは、それぞれ別の役割です。

善意で支えてくれる人だからこそ、

その人にどこまでお願いするのかを曖昧にしない。

これも、

身寄り問題を考えるうえで、

とても大切なことだと思います。

そして、もう一つ考えておきたいことがあります。

そもそも、

「身元引受人になってくれる家族がいない」

という問題を、

知人や友人、支援者など、

誰か一人の善意だけで解決しようとしなくてもよいようにすることです。

身寄り問題というと、

「未婚で親族がいない人」

「子どものいない夫婦」

などを思い浮かべるかもしれません。

でも、これからはそれだけではないと思います。

子がいても遠方で暮らしている。

きょうだいも高齢になっている。

親族とは長く交流がない。

子も病気や障害などを抱えていて、支援することが難しい。

「家族がいること」と、

「いざというときに家族に頼れること」は、

同じではありません。

だからこそ、

元気なうちに、

自分が入院したとき、誰に連絡してもらうのか。

自分でお金を管理することが難しくなったら、誰に任せるのか。

施設への入所など、生活上の契約が必要になったら、誰に支えてもらうのか。

そして、自分が亡くなった後のさまざまな手続きを、誰に託すのか。

一つずつ整理しておく。

そして必要に応じて、

財産管理等委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約、遺言など、

その人に合った仕組みを組み合わせて、

「家族がやってくれるはず」の部分を、

元気なうちに「仕組み」に変えておく。

これも、大切な「老いじたく」です。

身寄り問題への備えは、

「自分の面倒を見てくれる人を一人探しておくこと」

ではないと、私は考えています。

必要となる役割を一つずつ整理して、

誰が、どこまで担うのかを決め、

法律と福祉の仕組みを組み合わせて準備しておく。

それによって、

自分自身の将来に備えると同時に、

善意で支えてくれる人に、

思いがけない負担を背負わせない。

そこまで考えて準備しておくことが、

これからの「老いじたく」ではないでしょうか。