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2026.10.23

【認知症になったら、住む場所は誰が決める?】

義母の家で暮らす3匹の猫たちと、

2歳のゆ息子が遊んでいます。

実は、

この猫たちには、

ちょっとした物語があります。

7年ほど前。

私が成年後見人を務めていた、

認知症のある高齢男性のお宅には、

9匹もの地域猫が棲み着いていました。

しかも、

次々に子猫が生まれるのです。

このままでは猫たちの世話も難しくなり、

この男性の住まいの衛生環境も悪化するため、

親猫を捕獲して去勢手術をし、

子猫たちは里親探しをすることになりました。

そのうちの3匹を引き取ってくれたのが、

私の義母です。

あれから時が経ち。。。

当時は影も形もなかった息子が、

今、その猫たちと遊んでいる。

不思議なご縁ですね。

そして、

猫たちの姿を見るたびに、

私はあの男性のことを思い出します。

先日の「信州オレンジサミット2026 in 松本」でも紹介した、

忘れられない支援事例の一つです。

■ 「俺は、ここで暮らしたい」

その男性は認知症があり、

一人暮らしを続けていました。

自宅にはごみが文字どおり山のようにたまり、

猫の糞尿による衛生面の問題もありました。

火災や転倒など、

心配なことも少なくありません。

支援者から見れば、

施設で暮らした方が安全だと考えたくなる状況です。

それでも、

ご本人は自宅で暮らすことを望んでいました。

猫たちを

「俺のファミリー」

と呼ぶ方でした。

この男性にとって、

自宅は単なる建物ではありません。

長年暮らしてきた自分の居場所であり、

大切な家族(猫たち)との生活の場だったのです。

■ 成年後見人が決めればいい?

認知症になり、

成年後見人が選任された場合、

その人がどこで暮らすかは誰が決めるのでしょうか。

成年後見人?

家族?

福祉関係者?

それとも本人?

実は、

成年後見人が選任されたからといって、

成年後見人が本人の住む場所を

一方的に決めてよいわけではありません。

民法858条には、

成年後見人が事務を行う際、

本人の意思を尊重し、

心身の状態や生活の状況に配慮しなければならないことが定められています。

つまり、

成年後見人の仕事は、

本人に代わって何でも決めることではないのです。

認知症になったからといって、

自分の希望や思いまで失われるわけではありません。

判断することが難しくなっても、

その人が何を望み、

何を大切にしているのかを知ろうとすることが必要です。

■ 安全な暮らしと、望む暮らし

もちろん、

本人が望めば、

どんな危険があっても自宅で暮らせるというわけではありません。

命や健康に重大な危険がある場合には、

別の選択を検討しなければならないこともあります。

ただ、

そこで直ちに

「施設に入りましょう」

と決めてしまってよいのでしょうか。

この男性の支援では、

自宅の清掃や生活環境の改善、

猫たちの世話、

介護サービスの利用など、

さまざまな課題に一つずつ取り組みました。

私一人でできたことではありません。

介護・福祉の専門職、

地域のお店、

地域の方々など、

多くの人の協力があってこそ実現した支援です。

危険があるから諦めるのではなく、

危険を減らしながら希望をかなえる方法を探す。

結果として、

この男性は、

最期の約2週間を除き、

望んでいた自宅での暮らしを続けることができました。

■ 「本人のため」は、誰が決める?

私たちは、

誰かを支える立場になると、

つい「安全な方が本人のためだ」と考えてしまいます。

それ自体は、

決して悪いことではありません。

でも、

安全であることと、

その人が幸せであることは、

必ずしも同じではないのです。

認知症になっても、

成年後見人がついても、

その人の人生の主人公が変わるわけではありません。

今日も義母の家では、

3匹の猫たちが元気に暮らしています。

7年前、

あの男性が「俺のファミリー」と呼んでいた猫たちの子どもです。

その猫たちと遊ぶ息子を見ながら、

あの方の暮らしを支えた日々を、

懐かしく思い出しました。