- 優一の活動記録
「認知症になったら何が起きる?」プロが教える“困らない老いじたく”完全ガイド

認知症は、誰にとっても起こり得る老いのプロセスです。しかし、多くの方が誤解しています。
「認知症=不幸」ではありません。
ただし、認知症によって判断能力が低下すると、日常生活だけでなく“法律・財産管理の世界”でさまざまな制約や不便が生じます。
行政書士として後見人等を多数お受けするなかで、単に「物忘れが増える」だけでは済まない現実を数多く見てきました。
課題①:銀行口座・資産が“事実上凍結”される
認知症が進行し、判断能力が低下すると、
- 定期預金の解約
- 不動産の売却
- 遺産分割協議の参加
- 保険金請求
など、法律行為ができなくなる場面が増えます。
すると、生活費の引き出しひとつにしても家族が困り、実務的には「資産凍結」に等しい状況が生じます。
▶解決策:家族信託・任意後見契約の活用
家族信託なら、判断能力が低下しても財産管理を家族が継続できます。
任意後見契約なら、将来の後見人(任意後見人)を自ら選び、財産管理・医療介護の意思決定を託せます。
法律と福祉が“柔らかくつながる”仕組みで、安心感は桁違いです。
課題②:医療・介護サービスの選択が難しくなる
「入院」「手術」「施設入所」など、人生の要所で同意が必要です。
認知症が進むと、
- 自分の希望を言語化できない
- 説明を理解できない
という状況が生じ、家族や医療・介護現場が判断に困るケースが増えます。
▶解決策:エンディングノート + 任意後見契約
エンディングノート(人生会議)で、医療介護の希望を“前もって”見える化。
その上で、実務を担う後見人として任意後見人を指定しておけば、本人の価値観に沿った判断が継続されます。
課題③:施設入所や病院受診の「身元保証」で立ち往生
身寄りのない方・おひとりさまでは特に深刻です。
病院や施設から、
「緊急連絡先」「身元保証人」をどうするか」
という壁に直面し、入所や受診が進まないことがあります。
▶解決策:専門職による総合支援(委任契約+任意後見+死後事務)
士業(行政書士等)が
- 財産管理等委任契約
- 任意後見契約
- 死後事務委任契約
- 遺言書作成
を組み合わせて包括的にサポートする方法は、身元保証ビジネスより透明性・法的安定性が高く、福祉現場からも評価されています。
課題④:相続が“円満に進まない”
認知症になってからでは、
遺言書の作成は困難になります。
また、判断能力に疑義が出ると、相続手続き自体が止まり、家族間トラブルに発展することも珍しくありません。
▶解決策:生前対策(遺言書+家族信託)
- 公正証書遺言で自分の意思を明確にする
- 家族信託で財産承継の設計を“生前から実行可能”にする
これにより、相続トラブルは大きく減らせます。
課題⑤:日常生活の支払い・行政手続きが滞る
後見人として日々感じることですが、認知症の方は
- 公共料金の未納
- 家賃滞納
- 課税通知の放置
- 通院忘れ
など、生活全体が“静かに混乱”していきます。
▶解決策:任意後見・家族信託・専門職の生活支援
実務を担う仕組みを前もって作れば、
**「困らない認知症生活」**は十分に実現可能です。
専門職の視点:認知症は“早く備えた人ほどラクになる”
認知症の備えは、
法律 × 福祉 × 医療 × 生活支援
の連携が整うほど、安心感が増します。
行政書士・社会福祉士・家族信託専門士として、後見人等を多数お受けしてきた経験から断言できます。
認知症になっても「望む生活」を続けるために
最後に、一つだけお伝えしたいことがあります。
認知症対策のゴールは、財産管理でも書類作成でもありません。
目的は、
“本人が望む暮らしを最後まで実現すること”
です。
そのためには、制度や契約をただ並べるのではなく、
本人の価値観・家族状況・財産状況を踏まえて、オーダーメイドで設計することが欠かせません。
まとめ
- 認知症の課題は「生活」「法律」「医療」「相続」にまたがる
- 早期の備えでほぼすべての課題は軽減できる
- 家族信託・任意後見・遺言・エンディングノートは鉄板ツール
- おひとりさま・身寄り問題には専門職の包括支援が有効
- 目的は「困らない生活」「望む暮らしの継続」
