なんでも相談 2017.02.06 兄が父の遺言を守らずに母の世話をしない。遺言を守らせたい。 父は、長男である私の兄に対して、「自分の死後には母と同居して母の世話をする」ことを条件にして、「自宅を相続させる」という遺言を残して他界しました。 しかし、兄は父が亡くなるとすぐに母と別居し、母の世話をしようともしません。 私は兄のこうした態度が許せませんし、母のことが心配なので、私が母と同居して母の世話をしても良いと思っています。 ただ、父の遺言をないがしろにしてしまうことには気が引けます。 まずは兄に父の遺言を守らせたいのです。 どうしたらよいでしょうか。 行政書士 宮澤優一 より: 2月 6, 2017 11:49 pm 「遺言の取消し」を盾にして、遺言の履行請求ができます お父様がお兄様に対して残したような、「遺産を相続させる代わりに、相続を受けた者に一定の負担を課す」という遺言のことを「負担付きで相続させる遺言」といいます。 お兄様のように、遺言によって相続を受けることになった方のことを「受益相続人」といいます。 この「負担付きで相続させる遺言」を、お兄様のような「受益相続人」が守らない(履行しない)場合、その他の相続人は受益相続人に対して、まず期間を定めて「遺言の履行」を請求することができます。 お兄様に対して「いつまでに遺言の約束を守りなさい。」と言えるということです。 遺言の履行を請求したにもかかわらず、定めた期間内に受益相続人が履行をしない場合、今度は遺言の取消しを求めて、家庭裁判所に対して「遺言の取消請求」をすることができるでしょう。 実は、この遺言の「取消請求」については、まだ判例上確定しているわけではないのですが、学説の多くが「取消請求」できるとしています。 遺言の取消しを請求できると解されている人は、お兄様のような受益相続人以外の相続人です。 相続人全員で請求する必要はなく、相続人の1人が請求すれば良いのです。 本当に遺言の取消しができるの? 裁判となった場合には、裁判所の判断となるわけですが、遺言の取消請求をするには、遺言を残した人が「遺言に残した内容が履行されないのならば、当該相続させる遺言をしなかったであろう。」と考えられる程度の負担の不履行がある必要があります。 つまり、「お兄様が約束を守ってくれないのなら、お父様はそんな遺言を残さなかっただろう。」と考えられる必要があるということです。 ご質問の場合、お兄様はお父様が亡くなってすぐに、本来なら同居してお世話をするべきお母様と別居していますから、お父様の遺言の目的は達せられていないと考えられます。 ですから、遺言の取消しを家庭裁判所に請求することは可能であるかと思います。 そして、遺言の取消し請求を受けた家庭裁判所は、審判により取り消すかどうかを決定するのです。 審判の結果、遺言を取り消すことが決定した場合、その遺言は「最初から無かった」ということになります。 そうすると、その遺言の対象となる財産は、法律で定められた相続人に分けられることになります。 まずは、遺言の内容を守るよう、お話し合いをしましょう。 相続人であるあなたは「遺言の取消し」を家庭裁判所に請求することができます。 それを盾にして、内容証明郵便などを利用して、期間を定めてお兄様に「約束を守りなさい。」といって遺言の履行請求ができます。 あなたも、お父様の遺言書は尊重したいとの想いでいらっしゃるようですので、まずはお兄様と話し合い、上記の話を踏まえて遺言書を守るようにと強く伝えることが肝要ではないかと思います。 相続・遺言書・老後のそなえ(成年後見)について詳しく知りたい方へ ⇒「相続」に関するコラム ⇒「遺言書」に関するコラム ⇒「老後のそなえ」に関するコラム こんなお悩みやお困りごとを解決します! ⇒「相続手続き」を失敗したくない ⇒確実に実現される「遺言書」を作りたい ⇒老後の不安をなくしたい <前の記事 後見人になると、相続の時に有利ですか? 一覧に戻る 次の記事> 高齢者を狙う犯罪撃退法の講演会を開催します
「遺言の取消し」を盾にして、遺言の履行請求ができます
お父様がお兄様に対して残したような、「遺産を相続させる代わりに、相続を受けた者に一定の負担を課す」という遺言のことを「負担付きで相続させる遺言」といいます。
お兄様のように、遺言によって相続を受けることになった方のことを「受益相続人」といいます。
この「負担付きで相続させる遺言」を、お兄様のような「受益相続人」が守らない(履行しない)場合、その他の相続人は受益相続人に対して、まず期間を定めて「遺言の履行」を請求することができます。
お兄様に対して「いつまでに遺言の約束を守りなさい。」と言えるということです。
遺言の履行を請求したにもかかわらず、定めた期間内に受益相続人が履行をしない場合、今度は遺言の取消しを求めて、家庭裁判所に対して「遺言の取消請求」をすることができるでしょう。
実は、この遺言の「取消請求」については、まだ判例上確定しているわけではないのですが、学説の多くが「取消請求」できるとしています。
遺言の取消しを請求できると解されている人は、お兄様のような受益相続人以外の相続人です。
相続人全員で請求する必要はなく、相続人の1人が請求すれば良いのです。
本当に遺言の取消しができるの?
裁判となった場合には、裁判所の判断となるわけですが、遺言の取消請求をするには、遺言を残した人が「遺言に残した内容が履行されないのならば、当該相続させる遺言をしなかったであろう。」と考えられる程度の負担の不履行がある必要があります。
つまり、「お兄様が約束を守ってくれないのなら、お父様はそんな遺言を残さなかっただろう。」と考えられる必要があるということです。
ご質問の場合、お兄様はお父様が亡くなってすぐに、本来なら同居してお世話をするべきお母様と別居していますから、お父様の遺言の目的は達せられていないと考えられます。
ですから、遺言の取消しを家庭裁判所に請求することは可能であるかと思います。
そして、遺言の取消し請求を受けた家庭裁判所は、審判により取り消すかどうかを決定するのです。
審判の結果、遺言を取り消すことが決定した場合、その遺言は「最初から無かった」ということになります。
そうすると、その遺言の対象となる財産は、法律で定められた相続人に分けられることになります。
まずは、遺言の内容を守るよう、お話し合いをしましょう。
相続人であるあなたは「遺言の取消し」を家庭裁判所に請求することができます。
それを盾にして、内容証明郵便などを利用して、期間を定めてお兄様に「約束を守りなさい。」といって遺言の履行請求ができます。
あなたも、お父様の遺言書は尊重したいとの想いでいらっしゃるようですので、まずはお兄様と話し合い、上記の話を踏まえて遺言書を守るようにと強く伝えることが肝要ではないかと思います。
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⇒老後の不安をなくしたい