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遺言の金額が訂正されている場合、遺言は無効?

自筆で書かれた父の遺言書が見つかりました。
ただ、気になるところがあるのです。
一度書いた600万円という金額が800万円と訂正されていることです。
この訂正は、ビジネス書類の訂正のように、二重線を引いて印を押して、「6」を「8」に書き換えてあるだけなのです。
私なりに調べたところ、遺言書の正しい訂正方法は、ビジネスマナーよりもっと厳しいルールがあると知りました。
その厳しい方法で訂正されていない父の遺言書は無効になってしまうのでしょうか?

  • 行政書士 宮澤優一 より:

    定められた方法による訂正でない場合、訂正の効力が認められません。

    ご質問にある自筆証書遺言は、民法に定められた方法による訂正がなされていませんので、訂正の効力は認められません。

    しかし、訂正前の遺言の記載内容は有効だと思われます。

    つまり、「600万円」という金額が記載された遺言書として有効だと思われるということです。

    自筆証書遺言の訂正方法

    遺言書の内容の訂正方法は、民法に定められています。

    その方法は次のとおりです。

    【遺言書(自筆証書遺言)の正しい訂正方法】

    1.文言を加えたい場合は、遺言書を書いた本人が、遺言書の訂正したい箇所に、{ のしるしを付けて、正しい文言を記入します。

    2.文言を削除・訂正したい場合は、遺言書を書いた本人が、原文が判読できるように消したい文言を二本線で消して、正しい文言を記入します。

    3.訂正した箇所に、遺言書に押印した印鑑を押印する。

    4.訂正した部分の欄外に「この行○字加入、○字削除」と書き入れるか、遺言書の最後に「この遺言書の第四行目『○○○』とあるのを『△△△』と訂正した」と書き入れる。

    5.上記4で書き入れた箇所に、遺言書を書いた本人が署名する。

    たとえば、ご質問の遺言書の場合、内容に書かれていた600万円の「600」を「800」と訂正した場合の訂正は、次のような方法になるということです。

    ①「600」を二重線で削除して、{ のしるしを付けて「800」を記入し、その箇所に押印

    ②その行の欄外に、「この行3字加入、3字削除」と書き入れて署名。または、遺言書の最後に、「この遺言書の第〇行目に「600」とあるのを「800」と訂正した」と書き入れて署名。

    このように、遺言書の訂正方法は、一般的なビジネス書類等の訂正方法と比べて極めて厳格です。

    遺言書を書いた人の真意を確保し、遺言書の変造を防ぐために、そのような方法とされているのです。

    【参考記事】

    自筆証書遺言の作り方

    自筆証書遺言を作るときに気をつけること

    正しくない方法で訂正された遺言書の効力

    ご質問のように、定められた方法による訂正がなされていない場合、原則として、「訂正は無効」とされ、訂正は無かったものとされます。

    つまり、訂正する前の遺言書が有効なものとして扱われるということです。

    ただ、訂正前の遺言書が有効となるのは、もとの遺言書の記載がきちんと判読できて、もとの記載内容のみで遺言書の趣旨が誰にもしっかり理解できる場合に限られます。

    もとの記載が読めない場合や、もとの記載のみでは、遺言書の趣旨が理解できないという場合には、遺言そのものが無効になることも考えられます。

    さらに判例では、「遺言書の内容から見て明らかな誤記の訂正については、たとえ間違った訂正方法であっても、遺言を書いた人の意思が問題なく確認できるのであれば、遺言書そのものの効力には影響がない」としたものがあります。

    ご質問の場合の遺言書は、変更した場所の指示、変更した旨の付記、署名がありませんので、訂正が無効であり、訂正前の「600万円」の記載がある遺言書として有効なものになると考えられるのです。

    これから遺言書を書こうとしている人へ

    遺言書の訂正は、遺言書が完成した後に訂正する場合だけではありません。

    遺言書を書く人が、遺言書を書いている過程で訂正する場合にも必要です。

    書いている最中に、記載内容に間違いがあることに気づいた場合、上記の正しい訂正を行えば問題ありません。

    ですが、訂正方法を巡ってトラブルになることがあります。

    ですから、書いているときに間違いに気づいたのであれば、最初から書き直すことをオススメします。

    何より、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言にした方が、こうしたトラブルは回避できます。

    参考までに、訂正の際に押される印鑑が、遺言書に押印した印鑑と異なっていても、遺言を書いた人の印鑑であることが立証されれば、その訂正は有効なものと考えられています。

    また、訂正の際に署名に用いる氏名は、もとの遺言を書いた人の氏名と異なる氏名(例えばペンネーム等)で署名されていても、遺言を書いた人の署名であることが確認できれば、有効であると考えられています。

    しかし、いざ相続が発生したときにトラブルのもとになるので、避けた方が良いでしょう。

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